ハンサードファンド分析 MC166 Pictet Water USD
本日ご紹介するファンドはスイスのプライベートバンクとして有名なピクテ社のウォーターファンドです。
2006年からの長期チャートでは世界株インデックスに比べると総じて好調に推移しているようです。オリジナルはユーロ建てで2000年からあるようですが、ハンサードに組み込まれているのがUSD建てなのでこちらで案内します。
多くの人が水のファンドか、きっと海水を淡水にするとか、ハイテクな企業に投資するんだろうな…将来水不足になるといわれているからきっと上がるんだろう…そんなイメージがあるかと思います。
はっきり言いますと、半分は全然イメージと異なると思います。
日本では上下水道は水道局などが運営していますが、海外では上下水道は民間企業です。そのため水関連企業と言ったら海外では、海水淡水化装置などよりは上下水道管理のほうがよっぽど身近な銘柄だったりします。
たとえば上位銘柄のアメリカン・ウォーター・ワークスは米国で最も地理的に分散された北米最大の民間上下水道会社です。Waste Connections やWaste Managementは廃棄物処理の会社ですね。
今は上位銘柄から消えているようですがスエズ運河の経営なども水関連です。
一方ダナハーやザイレム、Thermo Fisher Scientificなどは水質調査、科学機器・試薬メーカーなどの企業なのでイメージ通りだと思います。
このように化学メーカーと伝統的な 上下水道のような安定企業が入っている組み合わせはなかなか他にはないユニークなテーマになると思います。
株式ファンドの中では比較的リスクは少なめです。
投資地域はアメリカ58%イギリス11%と大手どころがメインになっており、安心して投資できます。思ったより欧州が少ないかなといった印象です。
水関のテクノロジー関連に55%、水の供給関連に33%、環境関連サービスが10%となっています。
投資としては比較的安定しているので中期以降は組み入れていい銘柄のように思います。
この記事を書く前と少し印象が違ったのが、意外にリスクリターンのバランスが良く、成績が良いですね。悪くない。ただ前半はよほどこの業界に強い成長性を感じていなければ、積極的に組み入れる必要はないと思われます。
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国際河川問題
世界的にみて日本ほど水資源が豊富な国は珍しいとされています。日本は新期造山帯といわれる、比較的近く変動が起きて新しい地域にいるため、地震は多いですが、標高の高い山があるおかげで豊富な雨と水を得られます。
しかし大陸に属する国々にとって、山のある上流と、海の近くの平野部では、圧倒的に上流のほうが川の水の支配力が強くなります。
例えば東南アジア最大規模を誇るメコン川の場合は、川の面積としてはミャンマー、ラオス、タイ、カンボジアのほうが多いですが、水の支配権は川の最上流にある中国のほうが圧倒的に力が強い状況です。仮に中国が上流部でダムをつくってしまうと、下流の水の流れ方は中国の貯水池操作次第になってしまいます。
また排水の規制なども行わないと、一国だけでは水質の管理もできません。
ちなみに同様の国際河川であるナイル川の場合は、ウガンダやスーダンを経て、エジプトを通って地中海に流れ込みますが、流域で最も影響力のある国であるエジプトが最下流に位置するため、問題は比較的起きにくいといわれています。
こうした地政学的なパワーバランスも投資するときの知識としては重要ですね。