ハンサード(Hansard)アスパイア解体新書2021

ハンサード(Hansard)アスパイア(いつかはゆかし)や海外投資を詳しく解説!

分散投資という大義名分 ファンドの運用とは何か

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ファンドマネージャーを理解することが、長期投資で勝つことにつながる

 

ハンサードは200本近い投資信託(一部ヘッジファンドもありますが)の塊です。

ファンドマネージャーを信頼して初めて長期投資が可能となります。

しかし日本と海外では投資文化が異なります。

 

日本は比較的減点主義が多く、大きな失敗をしないことを重視しますが、海外は加点主義です。そのため投資に対するスタンスが大きく違う気がします。

 

◆日本の機関投資家は草食系

 

日本の機関投資家分散投資が得意です。

またチームを前面に出し、ファンドマネージャーの名前をはっきりと表示しません。

 

減点主義が怖いため、自分が自信を持った良い銘柄だけ買えばよいのに、分散投資でリスクを下げなければとせっせと異なる銘柄を組み入れます。

 

通常のファンドマネージャー貸借対照表損益計算書をよく読み、決算説明会にもよく行き、IRに対して質問をします。しかし、最初から分散投資すると決まっていると1銘柄1銘柄に掛ける時間も、熱意も薄らいでしまうのです。

 

正直な話大型銘柄に投資するのならば、ファンドの残高が1000億円ぐらいまでなら、100~200銘柄も分散投資などせず、50銘柄あれば十分だと思います。

 

200銘柄も入れてしまえば、特定の業種の中では1番良いと思っていた銘柄だけでなく2番手、さらには3番手まで組み入れなければいけません。

 

そうなると1番手はどうかという、売り上げの分析はかなりアバウトでよいとなり、2番手3番手の保険に頼ってしまうことになります。

 

個人が保険に入ると事故が増えるという統計があるそうです。それは、保険に入るという安心感が事故を誘発するといわれています。同じように運用でも保険は1銘柄に掛ける分析が甘くなり良いことはないと思われます。

 

日本の投資信託でよくある5億程度のファンドなら10銘柄ほど、10億の残高でも20銘柄もあれば十分だと思います。

 

◆売上高の増加と純利益の増加

 

現在の状況を示す貸借対照表損益計算書。これは現在の一時点を示した、断面図です。今後株価が上昇していくかどうかは、今後の増益率など動的な将来の予測が重要になります。

 

そのためには、売上高(トップライン)の増加予想や、利益率(ボトムライン)の改善を予想することとなります。

 

この予想の手順は多くのファンドマネージャーによって異なりますが、日本の古いファンドマネージャーは売上高の増加を確認した後に、利益率の増加を確認していたようです。

 

しかし近年ROEの改善を重視して、売上高至上主義から利益率至上主義に徐々に変わってきていることもあり、昔よりは複雑になってきているように思います。

 

これは会計の目的が損益計算書アプローチからバランスシートアプローチ、つまり将来キャッシュフロー獲得能力、通称時価会計に移行してきたことも関係するかもしれません。

 

 

◆良い会社と悪い会社

 

よくIRに確認したファンドマネージャーは会社を見る時に独自の視点で確認することが知られています。スリッパがしっかり出るか、や挨拶がしっかりしているか、などこだわりがあるようです。

 

ただ多くのファンドマネージャーに共通することとして、

  1. 話の内容が抽象的ではなく具体的である
  2. 成果配分が年功序列ではなく成果報酬であり
  3. 組織風土が自由闊達であり
  4. 経営目標がROEなど数値目標であり
  5. 政策に提携や合弁など幅広い手段をもち
  6. 戦略が明確で、玉虫色で事業を広げすぎていないこと
  7. 起業家精神が残っている

あたりはよく言われることだと思います。

 

◆会社の数値化

 

基本的には企業の数値化はバランスシートや損益計算書で行われます。

しかしそのほかの定性的な部分を運用会社は独自に数値化して、ほかの企業と比較することをしたりします。

 

時価総額流動性の高さ) 5点

事業の将来性       5点

シェアの拡大       5点

経営者の持ち株比率    5点

経営の透明性(月次売上の公表など) 5点

資本政策の多様性     4点

経営目標         4点

負債比率         4点

営業利益率        4点

ROE水準の高さ     4点

ストックオプション    4点

製品の平均価格の上昇   4点

業種の景気サイクル(モメンタム) 2点

IR担当者資質       2点

従業員一人当たりの営業利益率 2点

ネット上の評判      2点

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合計60点

 

あとは株式のプレミアムを設定し業種ごとの適切なPERの倍率などを設定し、

想定株価などと比較した割安度を計測し、エントリータイミングを計ります。

     

 

◆新興企業の赤字が許されるようになってきた

 

 一昔前は赤字上場で、しばらく赤字が続くことは許されていませんでした。しかし最近は赤字上場が当たり前となり、上場で調達した資金でTV広告を打つなど、しばらく赤字という企業も増えてきました。

 

 ある意味将来の企業の成長性への投資という意味では意味のある資金調達ではありますが、いわゆる上場ゴールが多くはびこっていることも多くあります。

 

 多くのファンドマネージャーはマーケットインパトを与えない規模の企業にしか投資できないため、少額投資の個人のほうがこうした新興企業の場合は有利な側面があります。

 

 しかしこのような企業でも積極的に投資を可能とするのは、市場の拡大や、市場シェアの拡大、および経営者の能力などを読み切ることです。

 

 ファンドマネージャーの力はこうした、不確実な将来を動的にとらえていく能力であり、現在という静的な一点をデジタルに確認することではないのです。

 

 多くの投資家が今の実績だけを評価しますが、多くのファンドマネージャーが期待するのは安定的な投資家の資金です。短期で売買するような資金は、ほかの投資家の足を引っ張るだけなのでいらないのです。

 

 そういう意味では日本の投資信託は残高のトップテンが5年ごとにがらりと変わる、資金の出入りが多い国です。これは、以前は販売会社のせいだけとも思われていましたが、個人投資家の短期の運用成績重視も一因ということがネット証券の広がりとともにわかってきています。

 

 運用は短期でもうかるものではなく、資金が市場で役に立ち、その生み出した価値の分増えていくものです。そのためには1年、2年ではなく10年20年と長期の運用が必要になると理解していただければいいなあと思います。