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ハンサード(Hansard)運用会社のハウスビュー調査隊PIMCO編

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 当ブログでは度々運用会社のファクトシートを使って、運用実績を紹介していましたが、各運用会社がどのような投資環境を想定しているのか見てみるのも面白いですね。

 

本日はPIMCOが2019年6月にハウスビュー(会社としての見通し)を出していましたので、紹介します。

PIMCOの長期経済見通し基本シナリオ:主要10項目の要約

 

向こう3~5年、経済成長は概して精彩を欠き、先進国では低インフレが続くと予想しています。労働市場のスラック(緩み)は、まもなく過去最長となる景気拡大の中でほぼ解消されており、賃金上昇のゆるやかな加速をさらに後押しすることになるでしょう。しかしながら、最新テクノロジーが徐々に普及すると、生産性向上のペースが若干速まるとみられ、これが予想インフレ率の低さと相まって、消費者物価の上昇を抑えるとともに、労働力人口の伸び鈍化と高齢化が潜在GDPの伸びに及ぼすマイナスの影響を概ね穴埋めするとみられます。

 

→労働力不足により賃金が上昇すると予想。ただし、AIやロボットの普及により、少ない人数で効率的に業務が回せるようになれば、賃金の上昇スピードは遅くなり、企業業績の下押し圧力にはなりにくい、と予想しているようです。

 

PIMCOの長期経済見通しの基本シナリオでは、向こう3~5年以内に先進国が浅い景気後退入りし、回復は緩慢なものになるとの予想を継続しています。深刻な景気後退は通常、経済および金融の大きな不均衡と、積極的な金融引き締めが重なった時に引き起こされます。今後数年については、そうした可能性がまったくないわけではありませんが、特にFRBハト派に方針転換したことを踏まえると、どちらの可能性もきわめて低いと言えるでしょう。しかしながら、特に欧州と日本で金融政策と財政政策の余地がほとんどないことから、次の景気後退は、浅いながら、通常より長期化する可能性があります。

 

中央銀行の適切な金融調節によりリーマンショックのような大きな景気後退はならないと予想しています。

 

先進国の次の景気後退の引き金となりうる要因として、①貿易戦争の激化、②地政学的ショック、③政策および政治的な不確実性の大幅な上昇、④自然発生的な資産価格の大幅調整、⑤中国経済の急減速が挙げられます。重要なのは、先進国の潜在成長率が相対的に低い中、わずかなきっかけで景気は後退局面に入る、ということです。さらに、リスク資産のバリュエーションが割高な時は、金融市場では、本格的な不況に至らない景気の急減速であっても、そのように感じられる可能性があります。

 

①貿易戦争の激化、②地政学的ショック、③政策および政治的な不確実性の大幅な上昇、④自然発生的な資産価格の大幅調整、⑤中国経済の急減速がキーワードですね。

リスク管理コンサルタントのユーラシアグループが発表した10大リスクも参考に乗せておきます。

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ユーラシアグループ10大リスク

 

ほぼすべての国や地域でインフレ率が目標を下回る水準にとどまる見通しを踏まえ、主要中央銀行は、向こう3~5年のほとんどの期間、政策金利をニュー・ニュートラルの水準かそれ以下で維持すると予想しており、成長率が予想を下回ったり、インフレ・リスクが顕在化した場合、予防的に金利を引き下げる余地があるとみています。

 

→低金利は今後も続くと予想しています。

 

次の景気後退局面では、ゼロ金利制約に戻り、資産買い入れが再開される可能性が高いとみられますが、ターム・プレミアムが既に低く、マイナスにすらなっている現状では、その効果は限定的なものになるでしょう。次の景気後退局面で中央銀行が取りうる追加的な手段としては、FRBが現在検討している平均インフレ目標、一時的な物価水準目標や、日銀が既に導入しているイールド・カーブ・コントロールなど超低金利を長期化する戦略があります。しかしながら、資産買い入れなどの政策については、政策効果が逓減していくと予想しています。

 

→ただし金融緩和の効果自体は限定的と考えています。

 

先進国では金融政策同様、財政政策も、向こう3~5年は経済成長を下支えする方向に傾く可能性が高いでしょう。景気後退がないとしても、ポピュリストの圧力や借入コストの低さは、多くの政府が財政支出の拡大や消費税減税、低所得者の減税を実施するインセンティブになるとみられます。さらに、景気が後退した場合、金融政策の余地と実効性が限られていることから、景気刺激策として財政出動への圧力が高まるとみられます。そうしたなか、米国は欧州や日本に比べて財政拡大の余地があり、政治的配慮を求められることが少ないと言えます。

 

→一時的に株価が急落することはあっても、政策による下支えで大きな谷にはならないと思われます。

 

向こう3~5年は、暗黙的にも明示的にも、様々な形で金融政策と財政政策の協調が進むと予想しています。こうした背景から、ほとんどの先進国では財政赤字や公的債務の対GDP比が低下するのではなく上昇するとみられますが、中央銀行は(引き続き)、政策金利を低水準で維持し、資産買い入れでターム・プレミアムを抑えることにより、拡張的な財政政策の財源確保を支援することになるでしょう。金融政策と財政政策のより緊密な協調は、中央銀行の独立性の一部が失われることを意味し、長期経済予測の対象期間の終了時点または超長期で見た場合、インフレが進行する道を開く恐れがあります。

 

→従来は金融政策主導だったのが、世界的に財政支出をする下地ができてきており、長期的な視点ではインフレリスクが高まってきています。インフレリスクには金や商品、鉱物資源など実物資産への投資が有効です。

 

地政学と貿易政策は、向こう3~5年の間では引き続き経済や市場のボラティリティ要因になるとみられます米国では、対中貿易での強硬なスタンスが、民主・共和両党で勢いを増しています。欧州、とりわけドイツの巨額の対米黒字は、さらなる関税措置の標的になります。より一般的には、多くの国でポピュリストの圧力によって保護主義が高まり、脱グローバル化が推進される可能性があります。

 

保護貿易のリスクは今後も続きそうです。

 

中国経済に関しては、人口動態がマイナスに働くこと、債務比率上昇の抑制を重視した政策の継続、貿易摩擦が容易に解消されないことを踏まえると、向こう3~5年で成長が減速するとみています中国経済が輸出・投資主導から消費主導に転換し、資本流入の自由化を進めると、経常収支は黒字から赤字に転じるとみられます。同時に、中国は製造業のバリューチェーンにおける高付加価値化を進めることで、日本、欧州、米国、東南アジアの高付加価値メーカーの競争相手としての存在感が増すことになるでしょう。

 

→中国の成長性の原則はある程度織り込まれています。その一方先進国と高付加価値商品についても競合になっていくと予想されます。

 

エマージング諸国の経済見通しは比較的良好ですが、世界貿易に対する潜在的ショックと国内のポピュリズムが、長期経済見通しのリスクとなります。過去5年の負のショック(テーパー癇癪、ドル高、コモディ価格急落)によって覆い隠されていますが、エマージング諸国の対外収支の不均衡、バランスシート、国内の信用格差は、傾向的に改善してきました。また、エマージング通貨はほとんどの場合、競争力があり、金融政策の枠組みはより信頼できるものになっています。しかしながら、脱グローバル化の動きとともに、エマージング諸国特有の政治的リスクは、引き続き経済および市場のボラティリティを高める要因であり、エマージング諸国間で格差が広がることになるとみられます。

 

新興国の経済的競争力は高まってきています。脱国際化が進むことで、新興国間にも格差が生じる可能性があり、適切な投資対象を選ぶ必要が生じています。

 

 

長期的な創造的破壊に備えた戦略

創造的破壊を乗り切る戦略について議論します

信頼性の高いインカム

向こう3~5年において、創造的破壊の要因となりうる5つを挙げました――①中国、②ポピュリズム、③人口動態、④テクノロジー、⑤金融市場の脆弱性。いずれも市場リスクを高め、一部は景気後退リスクを高める要因となります。PIMCOの基本シナリオでは、向こう3~5年間の景気後退入りを想定していますが、浅いものになるとみています。

さらに金利は、長期にわたって低水準にとどまり、ほとんどの資産クラスでバリュエーションの伸長が予想されます。ボラティリティも急上昇する可能性があります。一時的な上昇は周期的に話題になったものの、全体としてのボラティリティは歴史的に低い水準に抑えられてきました。

こうした環境で、インカム及びキャピタルゲインの目標を達成するには、分散化を進め、責任ある態度でのポートフォリオ管理が重要になります。投資家は過度なリスクを取ったり、やみくもに利回りを追求したりすべきではないと考えます。むしろ、ダウンサイドのリスクをヘッジするとともに、予想外のアップサイドを捉えるためには、高利回り債と高格付け債の両方で利回りの源泉の分散を進め、資本構成上位の資産に投資し、ポートフォリオの柔軟性を確保しておくべきだと考えます。

分散を進め、より保守的な姿勢を取ることは、短期的にポートフォリオの利回りの一部を諦めることを意味しますが、市場のストレス時の耐性をポートフォリオに持たせる一助となり、結果としてより信頼性の高いインカムを得るアプローチになります。

退職に向けたソリューション

多くの国で人口が高齢化しており、経済成長、インフレ率、さらには退職後の資金に大きな影響を与えています。たとえば米国では、今後10~15年で7,500万人以上のベビーブーム世代の退職が見込まれており、毎日約1万人が退職する計算になります(出所:米国勢調査局)。

こうした人口動態の変化を受けて、資産運用業界では退職に向けたソリューションが最優先課題になり、世界中の最高投資責任者、個人、アドバイザーにとっては主要な計画立案と資産運用の課題になっています。

PIMCOは、受託資産の半分以上を退職に特化した運用ソリューションを提供している大手運用会社です。年金市場全体で1,750億ドル超の債務重視運用を手がけ、10万以上の確定拠出年金プランにおいて様々な債券商品を提供しています。また、富裕層向けに膨大な個人年金口座の運用を行なっています。

歴史的に、退職に伴う資産運用に関する議論の多くは、退職「時に向けた」、積み立ての局面に焦点が当てられてきました。今や、退職「後を通して」資産を取り崩す局面でより良いソリューションを探ることが重要になっています。PIMCOでは、シカゴ大学ブース・スクールの意思決定研究センターとパートナーシップ を結ぶとともに、PIMCOのコンサルタントであるリチャード・セイラー教授を通して、行動経済学に基づく知見を深めています。また、退職関連のリソースと専門家を総動員し、退職者が購買力を維持し、市場のダウンサイドを緩和し、長寿リスクに対処しながら、退職後を通して一定のインカム獲得を目指す戦略を策定しています。

ESG投資

世界経済は現在、経済、社会、環境の大きなリスクと同時に、投資機会に直面しています。経済や投資のパフォーマンスは、持続可能性の問題、特に気候変動との結びつきを強めています。

持続可能性は、責任ある投資の究極的な目標ではありますが、投資家の前には、規制の改正や不完全なデータなどいまだに多くの課題が立ちはだかっています。こうした課題はあるものの、金融業界はより持続可能な市場に向けて取り組んでいます。

PIMCOのアプローチは2本の柱で成り立っています。一つ目はESG(環境、社会、ガバナンス)分析の運用プロセスへの統合です。PIMCOにとってESG投資はより良い世界を創るためだけではありません。より良い投資判断をするためでもあります。

二つ目は、ESG志向の高い投資家向けに、持続的な変化をもたらしつつ同時にリターンの提供も目指す、ESGに主眼を置いたプラットフォームの構築です。ESG投資が、金銭的なリターンか持続可能な影響をもたらすかの二者択一の見方である必要はもはやないと考えています。投資家は両方を追求することができます。

今後ESGの視点を踏まえた分析は、信用リスク、デュレーション、その他のリスク要因の評価と共に、極めて自然な債券投資プロセスの一部になると考えています。 年次長期経済予測会議のプロセスに沿ってESG分析を行うトップダウンの視点と、債券セクター全体においてESG調査・分析が統合されているボトムアップの双方の視点から、すべてのポートフォリオにこのプロセスを導入するよう努めています。

 

japan.pimco.com

 

しっかりと会社の運用指針を出していて素晴らしいですね。

PIMCOのファンドに対して組み入れてみてはという提案もしやすくなると思います。

このような指針の元、実際にどのようにファンドを運営しているかを見ることによって、よりファンドの中身を理解できるようになります。